レンズ越しの君へ
「ごめん、それ以外なら何でもしてやるよ……」


そう言った廉が、どこか悲しそうに微笑んだように見えた。


どう考えても他に欲しい物なんて無かったけど、何か言わないと悪いような気がして…


しばらく考えた後、笑顔で口を開いた。


「廉が撮った写真が欲しい。ダメかな……?」


「……そんな物でイイのか?」


廉が珍しく戸惑ったような顔をしたけど、あたしは微笑みながら頷いた。


「うん。だって、まだ廉の写真見た事ないもん」


「わかった。じゃあ、明日持って来るから」


「楽しみにしてるね♪」


明るく言ってから、また廉に笑顔を向けた。


彼が頑なに『人は撮らない』と言う理由が、すごく気になったけど…


あたし達の関係は、恋人じゃない。


その事を考えると、やっぱり今日も何も訊けなかった。


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