愛の雫
底無し沼のような泰人との関係から、あたしを救い出してくれた凪兄…。


凪兄の“男の人”の表情を見たのはあの時が初めてだったけど、今はもう彼を恐いとは思わない。


「……凪兄も、あんな顔で怒ったりするんだね」


「ん?」


呟くように言った言葉は、歩き出していた凪兄には届かなかったみたい。


「ううん、何でもない」


あたしは首を横に振って、彼の隣に駆け寄った。


この日、凪兄が作ってくれたカラメルミルクは、いつもよりも温かくて優しい味がした――…。


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