花の魔女
「うん。この家を守ってもらってる。そう簡単には人に見つからないはずだ」
ふぅん、とナーベルは近くにあった丸椅子に腰を下ろした。
ナーベルの興味は森の精に移っていた。
「私も森の精に会いたい」
そう言ったナーベルに、ラディアンは微笑んだ。
「もうすぐ来ると思うよ、僕たちがここに来たのに気づいたはずだから……ほら」
ラディアンがそう言い終わるのと同時に、家のドアが開き、ナーベルは驚いて顔を向けた。
ドアの前に立っているのは、緑の瞳と髪をもつ青年だった。
小麦色に日に焼けた肌と意志の強そうな目に、力強さを感じる。
青年はナーベルを見つけると、その顔を崩した。
「あんたがラディアンの花嫁か。よろしくな、俺はジェイク」
「わ…私はナーベルです。よろしくお願いします」
初めて見た精霊に感激し、差し出された手を恐る恐る握ると、強く握り返された。
「普通に話せよ。堅苦しいのは、嫌いなんだ」
そう言ってもう一度ナーベルに笑みを向けると、今度はラディアンの方を見た。
「守りは完璧だ。ただ、冬はちょっと力が弱まっちまう。それだけは覚えておいてくれ」
ジェイクの言葉に、ラディアンは頷いた。