花の魔女
枯れゆく花
何も知らないナーベルは、毎日黙々と魔女修行に励んでいた。
花の力はさすがに難関で、なかなか上手くいかなかったが、ナーベルはめげずに取り組んでいた。
季節は森を爽やかに彩る夏を過ぎ、秋を迎えた。
森の木々は紅く色づき、木の実を実らせ、動物たちはせっせと体に栄養を溜め込むために忙しそうに動きまわっている。
「今日もよろしくね、フィオーレ」
体に涼しくなってきた秋の風を受けながら、花の魔法の唯一の講師であるフィオーレを振り返った。
しかし、フィオーレは返事をしない。
不審に思ったナーベルがフィオーレの顔を覗き込むと、いつも薔薇色に染まっているはずのフィオーレの頬が真っ青であることに気づき、動揺した。
「フィオーレ?どうしたの……」
心配そうに覗き込むナーベルにフィオーレは気づき、その青白い顔に無理矢理笑顔を浮かべた。
「大丈夫、何でもありませんわ。さぁ、始めましょ……」
そう言ってふらつくフィオーレに、ナーベルは慌てて駆け寄った。
「大丈夫じゃないわ!今日は修行はやめて、早く家に戻りましょう」
ナーベルは申し訳なさそうに力なく頷くフィオーレに手を貸し、急いで泉をあとにした。
冷たくなった泉の水面が、風に扇がれてゆらりと揺れた。