花の魔女
『捕らえよ』
「!!」
男が命令すると、周りにいた同じ仮面の男達がラディアンとナーベルを引き剥がし、ラディアンだけを連れ去ろうとした。
「いやっ、いや!ラディアン!」
ナーベルは咄嗟にラディアンの長い髪を掴んだ。
絶対に離すものかと力を込めたのも束の間。
「ごめん、ナーベル」
ラディアンがどこからともなくナイフを取り出し、あろうことか自分の髪をザクリと切ってしまった。
「ああ!!」
絶望に声をあげるナーベルに、一番近くにいた男がさっと手のひらを向けると、ナーベルはかくんと床に膝をついた。
「い…や……行かないで…」
薄れていく意識の中で、男達に囲まれながら悲しそうに自分を見下ろすラディアンが見えたが、ナーベルの意識はふっと途切れ、冷たい床の上にドサリと倒れこんだ。