溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
思い出すように。

ははっと笑って、私の胸に頭を載せると。

「ま、早めに日程言うから次の出張には一緒に行こう」


眠そうな声が聞こえてきたと同時に、濠の両腕が私の身体を包み込み、ギュッと…安らぐ強さで抑えつけられる。

濠の体重の半分くらい。

私に載せて。

私の心臓の音を聞きながらこうして眠るのが、ここ10年の濠の当たり前になっていて、それぞれに自分の家はあるのに。

ほとんどの夜を二人一緒にどちらかの家で過ごしている。

『一緒に暮らそう』

って濠が言い出してくれないかなと…期待がなかった訳じゃない。
行き来するのも面倒な時があるし、経済的にも楽だし。

どんどん好きになっていく気持ちを抑えて隠すのに必死で…うまく言い出せないままにダラダラと月日が過ぎていくうちに、何もその事に触れず私の部屋に帰ってくる濠には同棲なんて気持ち、ないんだなと…諦めてしまった。

二人で寄り添って楽しく過ごせればそれで幸せ…と自分に納得させて。

すーすー寝息をたてる濠の頭をそっと撫でながら、今となっては濠には濠の部屋があって良かったと思う。

それでもやっぱり。

一緒に暮らしたかったし
結婚して『真田 透子』
にもなりたかったと思う。

今でさえ、責任や罪悪感を感じている濠の気持ちを利用しさえすれば。

濠の優しさは、私の願いをかなえてくれるに違いないけど、そんな事は無理に決まってる。

そう、無理ってわかってる。
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