溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~



「…飲んでるか?」

ぼんやりまったり…。
ほろ酔い気味に自分の世界に入っていると、喬が声をかけてきた。
私が少し体をずらすと、隣に腰を下ろした。

「透子の激励会なのに、単なる同期の飲み会だな」

手酌でビールを飲みながら苦笑する喬につられて、私も笑ってしまう。
来週から本社に異動する私の激励会と、とりあえずまだ公表されていないにも関わらず私の大賞受賞を祝う会…という名目の飲み会。

入社当時より断然少なくなった女性の同期。
結婚や出産で退職した人数の方が、今働き続けている人数を上回ってから久しい。

その中でまだ仕事を続けている私。
結束の固い同期の中で刺激を受け、切磋琢磨しながら頑張っている。
単純に仕事が好きっていうのもあるけれど、自分自身の居場所の一つを
手放すのが怖くて。

体調もようやく落ち着いて毎日を過ごす事ができるようになった高校時代。
それまでの私には、いつ止まるかわからなかった心臓を抱えながら、未来への想いなんて遥か遠くて。
夢をみる事も、明日何をしたいかも考えられなかった。

15歳の私には、手術をして助かる可能性は80%だと言われていたけれど、20%が怖くて手術を受ける勇気がなかった…。

今は手術の成功のおかげで、こうして明日を考えながら日々を過ごしているけれど、必死でたぐりよせた今ある何もかもを手放せなくて。

仕事を続けているのかもしれない。
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