依存~愛しいキミの手~
どこまで行くんだろ?


大通りや裏道を結構歩いてきたはず。さっき原宿の駅前も通り過ぎた。


それにしても、6月の夜はまだ肌寒い。


上着持ってくれば良かったな。


身を縮め、半袖のシャツから出た腕をさすっていると、ふわっと肩に何かがかかる感覚があった。


!?


自分の肩に視線を移すと、圭介の腰に巻いてあったグレーのパーカーが垂れ下がっていた。


「あ…ありがと…」


突然のことだったのと、漫画でしか見たことなかったシチュエーションに、驚く。


戸惑いながらも、パーカーの袖を両手でつかみ、胸の前に持ってきた。


いい匂いがして、圭介の匂いなんだと思うと何だか照れくさくて、思わず下を向いた。


「ははっ、お前っていちいち反応かわいいな」


そう笑った圭介の目が、すごく優しい。


足が止まる。


トクン…


胸が高鳴るってこういうことを言うのかも…


圭介の笑顔に、優しい目に引き込まれて体が動かなくなった。


時間が止まる。


まさにその表現がぴったりだった。


まばたきもできずに、ただ、自分の心臓の音だけが響く中、圭介の顔だけを見つめていた。
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