赤い愉楽
「くそ!誰か通報したな!


話はまたゆっくりと聞かせてもらうぞ」



そう言ってクドーは
裏口から消えていった。


まもなく突入してくる警官隊。


怜奈は解放され
安どの表情。


安心するとまた溢れてくる涙。


そして警官隊の最後尾から
入ってきた男が


怜奈の顔を見てにっこり笑いかけ
こう言った。



「だから復讐なんて考えちゃだめって
言ったじゃないですか」



にこやかに笑う平野の前だが
怜奈はただ下を向いて泣きじゃくることしかできない。




怜奈の頭の中にはクドーの言葉がグルグルと
回っている。



「俺の青春は地獄でしかなかった」



怜奈は今自分が地獄に入り込んでしまったことを
心の底から実感していた。



クドーや平野のような人間が蠢く
地獄の底に怜奈は今確かに存在している。


窓の外は黒い雲で覆われようとしていた。








< 44 / 377 >

この作品をシェア

pagetop