流華の楔



永倉や原田と共に飲み比べをしていた藤堂は、とある光景を見て絶句する。



「げっ!」



和早と芸妓。
端から見れば端麗な男と芸妓が酒を酌み交わしているようにしか見えないが。




藤堂の酔いは一気に覚めた。





「おいあんた、そいつは駄目だ。俺にしとけッ!」





と、傍目も気にせず叫んだ。
その様子に、大人組は「にやにや」と笑う。




「おやぁ? 平ちゃんは新崎クンにお熱ですか〜?」


「なっ、新ぱ――違うし!」


「…そうか。そりゃあ惚れるよな。男所帯に高嶺の花、だしな」


「左之さんんんんっ!」




殴りたくても年上なので殴ることはできず、藤堂は両手でガシガシと頭をかいた。

和早から芸妓を引き離したかっただけなのに。



藤堂はがっくりと肩を落とした。
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