【短編】プロポーズはバスタブで。
 
「行こうか」


荷物を取り出し終わった孝明が、そう言ってあたしを促す。

自動ドアをくぐる孝明に続いて、あたしもそこをくぐった。





泊まる部屋は、階段を上って左に行った突き当たりにある。

荷物を適当な場所に置くと、あたしはバスタブにお湯を張るため、すぐにバスルームへ向かう。

すると、さっそく・・・・。


「ギューだけちょっとさせて」


後ろから孝明が抱きしめてきた。

孝明の体温と柔らかい匂いがあたしの体や鼻をくすぐって、脳がほんのりとろけてくる。

このまま抱かれてもいい・・・・なんて、ついいつもの感覚で肩から腕を回した孝明に手を触れたけど。


「はい、ギューは終わり。お湯がたまったら呼ぶから、それまでちょっと寝といたら?」


そう言って、クルリ。

あたしを180℃回転させてベッドのほうまで連れて行き、そこに腰を下ろさせた。

孝明は本当にあたしが疲れているって思っているんだろうか。

実はあたしの心の中を見透かしていて、でも哀れだと思って優しくしているんじゃないだろうか。
 

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