二 億 円



最低だな。



そう言いたかった。


だけど、あの日桜の木の下で眠る幼い少女に胸が高鳴った私も同じだ、と気づいた。


だから何も言えなかった。



「じゃあ、今日は帰るよ。また明日。」


いつもの柔らかい笑顔で去る彼からは想像も出来ない話だった。





その日は家に帰ってからも憂鬱感が拭えなかった。

勉強も上の空で、少し息抜きで公園へ出掛けた。




夜の公園、桜の木の下に座り、星を見上げた。


「…何も、ないな。」



空は真っ暗だった。
星一つない空だった。






「…あー、彌生お兄ちゃん?」


   ド ク ン 。



「ひなた、ちゃん…?」



振り返ると、反対側の木の下に少女がいた。



純粋で、無垢な、真っ白な少女。




私の心を揺さぶる幼い頃のお人形さんがいたのです。
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