駆け抜けた少女ー二幕ー【完】

「気に入らねぇなぁ…」


次第に寒さ増す京の町。 屯所も当たり前に寒く、書き物をしていた土方に熱い茶を差し入れた。


「なにがですか?」

「あの伊東って男だよ。 近藤さんは、やたら気に入ってるから加盟に関して文句を垂れるつもりはねぇが……」

「なにやら裏がありそうですよねぇ」

「沖田さん…(いつの間に)。 お茶入りますか?」

「お願いしまぁす」


用意宜しく自らの湯飲みを差し出す沖田。

既に慣れたことに驚かなくなった矢央は、話の続きを聞こうと土方に目を向ける。


「ズズッ…。あの方の頭の良さが必ずや新撰組のためになる…とか言ってたけど…」

「何を根拠に。 逆になる可能性だってあるんだ」

「ですよねぇ〜。 でもまぁ、近藤さんは人が良いですから」


何やら新たに新撰組に加わった伊東について議論しているらしく、しかし矢央には全くわからない内容だった。


伊東は頭も剣の使いも宜しいようで、それは必ずや新撰組の力になりますと力説する藤堂なら見てきたが、実際まだ本人とは会っていないのだから伊東については良く知らないのだ。


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