駆け抜けた少女ー二幕ー【完】
「あ〜、この部屋天国だなぁ」
そう言いながら永倉が部屋に入って来たために、話は中断されたかに見えた。
が、後ろ手に戸を閉めた永倉は矢央を見下ろして穏やかに微笑む。
「久しぶりに宴会だ。今日は、たらふく飲むとすっかぁ」
矢央と藤堂の間にドサッと座ると、お猪口を口に持っていく仕草をしてみせた永倉に、二人は顔を見合せた。
暫くして表情を崩した藤堂が、笑いをおさえて言う。
「――ぷっ! 新八さん、たまにってこの間も浴びる程飲んでなかったっけ?」
「お? そうだったか?」
「そうそう! べろんべろんに酔って帰ってきたから、平助さんと私が介抱して大変だったんですよッ!」
「そうだったかぁ?」
惚ける永倉に文句を言いながらも、矢央は嬉しくて仕方なかった。
バラバラになりつつあった仲間が、久しぶりに穏やかな時を過ごしていることが。
「お、ここにいたか!」
また戸が開き、現れたのは原田だった。
三人は原田を見上げ 「寒い」 と、一言告げた。
「今から土方さんに頼まれた物を買い出しに行くんだが、誰か着いて来てくんねぇか?
さすがに一人じゃ持ちきれねぇ」
「えー、力持ちな左之君がいれば大丈夫だろ?」
「面倒くさがんな、新八! 酒と食い物がなくていいのか!」
「年寄りは寒さに弱ぇんだな、これが」
この中で最年長であることをいいことに、雪が降る中を絶対に行きたくないとアピールする永倉。
ということは――――――
.