夜色オオカミ
「ほんとにお坊ちゃんだったんだねぇ……」
キョロキョロと辺りを見回しながら思わずそんな事をつぶやくと
十夜はクッ…と笑ってあたしを見た。
「おまえもいずれここに住むんだけど……?」
「…………っ!」
「わかってるか?」…と、不適に笑う。
「き、来たばかりで………っ」
あたしには何だか夢の世界のことみたいに、まだまだ現実味があるように感じられなくて……
十夜の言葉に真っ赤になって焦ってしまう。
「まぁ、もうちょい先だけど………。
さすがに16じゃ今すぐには連れてこれねぇ。」
自分のセリフになんだかムッとした顔をして十夜は黒い瞳を細めてあたしを見つめた。
「おまえはまだ現実感ないかもしれねぇけど……俺は今すぐにでも祈咲をさらいてぇよ………。」
「………っ!!」
熱い十夜の眼差しに…………
ほんとにあたし……おかしくなりそう………。
早くさらって欲しいなんて、思ってしまった………。