ありのまま、愛すること。
あの3年間、毎日毎日、繰り返し読んで、手垢にまみれて真っ黒になった聖書。

葦編三絶し、ところどころ修理し、中身には至るところに線が引かれている。

分厚い黒い表紙の聖書は何冊もあって、とても重かった。

いまでも時折、懐かしく頁をめくるその聖書の教えは、後に会社を創業する際の理念の元になっています。

キリストは、なにも悪くない自分が非難を浴びせられ、つばを吐きかけられ、最期には杭打ちにされます。

その自分を責める、バカにする苛め抜く人間のために、彼は命を捨てていくのです。

それこそが愛だとして。

その生き方が、私のいちばんの根っこにあります。

それは「利己」に対する「利他」の精神とも違うもの。

「利他」とは、他人のためになにかを施して、尽くすことです。

それは見返りを求めるという根拠に基づくものであり、ならば「利他」などという聞こえだけいい言葉で糊塗せずに、堂々と「利己のために相手に尽くそう」と。

ワタミという会社は、そんな理念の会社でありたいと、設立時に標榜しました。

ただ、教団にいた中学の3年間以後、私は特定の宗教活動をしていません。

それは、特に自分が違うステップに進んだからということでもなく、自分なりの考え方がその後にでき上がっていったからなのかもしれません。
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