シュークリーム
足を踏み出したのは、その直後のことだった。


心が覚えた気持ちは簡単に手放せないってことを、本当はわかっていた。


この関係にだってちっとも満足していなかったのに、恐くて満たされている振りをしたこともあった。


だけど……。


このままなにもしないで終わらせてしまえるほど、私の恋は小さな想いで出来ていない。


だから、安っぽいプライドなんて捨ててしまえばいい。


「村上君!」


私は覚束ない足取りでベッドルームを出て、玄関にいた村上君を呼び止めた──。


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