軽業師は新撰組隊士!



「三日間、ずっと会いにきてくれなかったではないかぁぁあ!」


「娘が落ち込んでおったのに、なぜおぬしに会いに行かねばならぬのだ!」



克に抱きつこうとする近藤と、逃げる克。
呆然とする楓。


「克くんのサラサラな毛並みが恋しいんだよ!」


「知らぬ!…って、は、離すんじゃ!」


この狭い室内で逃げ切れるはずもなく、呆気なく捕まった克。


(近藤さんの猫好きパワー……、すごい)

楓は未だに呆然としている。


「む、そうだ、楓くん!」


「は、はいっ!何でしょう?」


近藤に話しかけられ、ハッと我に返る。


「トシに…会ったらどうだい?この三日間、会ってないようだが…。」


「土方さんにですか?」


「アイツ、あれでいて優しいんだ。…心配、していたぞ?」



楓は初めて人を斬って、落ち込んでいた。

罪悪感に苛まれていた。

ご飯も、自室に膳を運んで食べていた。
誰にも会いたくなかった。

―――でも


「近藤さん、私、行ってきます!土方さんに会ってきます!」


「うむ!そうしてやってくれ!」


楓は部屋から出ようとして、一回振り返る。


「そうだ、近藤さん。」


「ん?」


「土方さんが優しいのは、とっくに知ってますよ。」


そう言って微笑んで、部屋を出た。

近藤は、そんな楓の言葉を聞いて、嬉しくなって微笑んだ。


……克は近藤の腕の中でジタバタと暴れていたが。




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