同窓会
「え、片桐さん?」

頭がぼうっとして、大石くんの言った言葉ばかりリフレインされる。

「ちょ、綾乃泣いてるの?」

ゆかちゃんの焦った声を聞いて、初めて自分が泣いていることに気がついた。

「わ、私ちょっと外出てくる!」

ずっとずっと涙を堪えてきたのに、気付かれないようにしてきたのに、ここで泣いちゃダメ!

バッグを持って、お店を飛び出した。

泣いてると意識した瞬間から、涙が留めなく流れてくる。

息が苦しくなる。


"前の方が良かった"

"片桐って男で変わるんだ"


別に大石くんに褒めてもらおうと思ったわけじゃないもん。

…なんて、自分を騙すことも出来ないくらいの言い訳で気持ちを落ち着かせようとした。

お店は人通りの少ない路地に面していたから、誰にも泣いているところを見られずに済みそうだった。
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