嘘婚―ウソコン―
チリリンと、ドアが閉まった。

「誰だ、あの子?」

陽平が聞いてきた。

「誰だ、あの子って…浮気相手みたいですね、周さん」

バーカウンターに戻ると、千広は言い返した。

「浮気相手って、ヒロはおもしろいことを言うんだね。

正直にそう尋ねただけなのに」

おかしいと言うように、陽平はクスッと笑った。

千広は息を呆れたと言うように息を吐いて、
「あたしの高校の時の友達です。

高校を卒業してから市役所で働いているんです。

どこの部署で働いているのかは、忘れちゃいましたけど」
ち、答えた。

何でわざわざこいつに教えなきゃいけないのかと、千広は心の中で毒づいた。
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