社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)



ノックしたら音が鳴るのは当たり前な事なのに、ビクッとしてしまう自分自身に苦笑いをする。


でも、その苦笑いは長続きしない。


何故なら――





「拓斗さん」





ノックしても拓斗さんからの返事はないからで、拓斗さんの名前を呼んでみても物音一つしない。


返事事も出来ないほど辛いんだろうか。


そう考えただけでもいてもたっても居られなくなった私は、入りますねと呟いた。


どうか鍵がかかってませんように。





―――ガチャ―





「あっ」





扉が開いた事に思わずビックリしてながら部屋を見渡した。


拓斗さんの部屋を一言で表せと言われたら迷わず私はシックと答えるだろう。


物が少なく黒と茶で統一されているこの部屋を。



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