時を止めるキスを


いつかは結婚したいなぁと、漠然と思ってはいるんだけど。それが現実味を帯びるにはまだまだ先は長いらしい。


女としての自立した生活はおろか、ぬくぬくと甘えてきた実家でも遂にパラサイト的扱いを受け始めたこの頃。


さらに“そろそろ結婚は?”と、孫が欲しいらしい母が何かにつけて言い始めたけれど。正直言って、そんな予定は皆無である。


こう述べると干物女街道まっしぐらに映る私だが、これでも同業種とのコンパで出会い、付き合って1年半経つ彼氏がいたりする。


とはいえ、彼氏がいようが安心するにはまだ早い。――人生のターニングポイントになる筈の彼氏の様子が、何だか最近オカシイから。


例えば、仕事終わりに掛けた電話に出なかったり、メールの返信に至っては2日も放置されていることがザラにある。


そして不穏な動きの決定打となるのが、彼のアパートを訪れた時に漂っている、甘くてフルーティな女物の香りだ。


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