空しか、見えない
 のぞむが少し猫背に座ったまま、瞳の光を反射させていた。手と手が触れ合ってしまう。別にのぞむには、何の意味もないのもわかっている。けれど佐千子には、その乾いた手のひらが覚えのある熱を運んでくるのがわかる。

「嫌い。大嫌い。そう言えば気が済む?」

 佐千子は床にあった浴衣を掴むと、慌てて皆の後を追って、階段を降りた。
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