アザレア


一筋の光さえ許さない暗闇の中を、私は歩く。

濃霧を匂わせるその場所を手探りで進んだ。


そしてその場所に私以外、誰もいないのだと気付き、足を止めて――ふと思う。

何故、社長は私を浮気相手に選んだのだろうか、と。


こんな時でも私が想うのは社長の事ばかりで、私の知る限り……少なくとも高校時代までの誠は、来るもの拒まずでありながら、“一夜限り”じゃないと相手にしなかった筈。


しかし、その答えは思考を巡らせるまでもなく、私は絶望する。

その為の肩代わりだったのか、と。
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