アザレア
呟かれた小さな声を、聞き逃す筈が無かった。

未だ血色の戻らない唇に耳を近付ける。


「まこ、と……」

俺を呼んでいる、と気づいた時。
長い睫毛が小刻みに揺れ、メイはうっすらと目を開いた。


微睡む瞳は中々俺を捉えようとはしない。

安心したのも束の間、込み上げる感情に耐え切れなくなった俺は、視点の定まらないメイの視界に割り込んで声を掛ける。


情けない顔をしている自覚はあった。

……けど、そこまで驚かれると正直心外だ。
何で貴方が心配するの? って、その顔。


――あぁ、やっぱりメイは何も判っちゃいない。
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