優しい手①~戦国:石田三成~【完】
――意外と料理が上手い。


それは普段が目いっぱい明るい桃には不釣り合いな特技のような気がして、出された数々の料理を前に三成は感嘆していた。


「大山、食事は桃に任せても良いのではないか?」


「しかし…桃の言うことが確かであれば、桃はこちらにずっと居るわけでは…」


――正論だ。

何故か三成はそれをすっかり忘れてしまっていて、またもや膳を隣に持ってきて、隣で食べている桃の横顔を見ていた。


「我ながら傑作!お姉ちゃんたちから料理くらいは覚えないとお嫁さんに行けないよって言われてたからすっごく頑張ったんだよー」


「桃は嫁に行きたいのか?」


「うん!女の子は大好きな人のお嫁さんになって幸せになるのが夢なんだよ」


まだ10代後半の桃はこれからどんどん綺麗になっていくに間違いない。

今はまだ誰もそれに気付いていなくても、いずれ誰もが認めることになるだろう。


――鋭い審美眼、洞察力のある三成はすでにそれを看破していた。


「桃、それで探しているものは見つかったのか?」


「んーん、全く。一体どんなものなのかもわかってないし…それに三成さん、あのネックレス返してもらえないかな?あれは…」


「そなたはせっかち故俺が預かっておく。失くすと…戻れなくなるんだろう?」


「あ、うん。そっか、三成さんが保管してくれるのなら安心!一番信用できる人だもんね!」


きちんと正座をして箸の使い方も上手く、行儀よい食べ方をする桃に三成は好感を持った。


ただ…


「それでね三成さん…あの…できたら今日も…一緒に寝ない?」


「こら桃!」


大山に叱られた桃はしゅんとしょげると箸を置いた。


「じゃあ…寝る直前まで一緒に居ていい?お家でもお仕事するんだよね?でも…絶対邪魔しないって約束するから隅っこに居ていい?」


「もののけが怖いのか?」


ふっと笑うと、桃の顔が真っ赤になって慌ててそれを否定にかかる。


「そ、そんなことないもん!三成さんって…意地悪!お化けなんか…お化けなんか怖くないもんっ」


声を震わせながら言う桃に三成が声を出して笑ったのを大山は顎が外れそうな表情で見ていた。
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