優しい手①~戦国:石田三成~【完】

三成と茶々の秘め事

またキスされそうになった時――襖越しに大山が声をかけてきた。


「三成様…よろしいですか」


遠慮気味に言い淀む大山を不審に思った三成の細くたくましい腕が緩み、慌てて胸の中から逃れると自身の身体を抱きしめた。


ややがっかりしたような表情を浮かべながらも立ち上がり、襖を開けて大山を入れると…この勤勉な男の顔色は真っ青だった。


「お、大山さん!?顔色が…」


「も、桃っ、ちゃ、茶々様がおぬしにお会いにいらっしゃったのじゃ!早う来い!今すぐ来い!」


つい先日会ったというのに目の前のハプニングに動揺していた桃が三成に助けを求めると…


何故かそのクールっぷりが冴える顔に苛立ちが滲んでいて、首を傾げていると大山から無理矢理手を引っ張られてこけそうになる。


「先日の見事なお着物は茶々様のであったか!なんと図々しいんじゃ!全力で謝って来い!」


「わ、わかった…けど…三成さんは?」


「ご側室様にお会いになるにはそれ相応の用意をせねばならんのじゃ!ああしかし…なんと美しいお方よのう」


大坂城で化粧や着物を着せてくれた茶々を思い出した。

もっと話したかったのだが…三成に拉致されてしまい、お礼も言うことができなかったので良い機会とも言える。


「ささ、行って来い!」


頬を赤らめながら大山が中の茶々に声をかけ、半ば背中を押されるようにして中へと入った。


「桃姫、城へ来ぬのでわたくしから出向かせて頂きました」


――藤色の上品な着物に、長い髪には赤い簪を挿した秀吉の寵姫。


そういえば三成とは親しいように見えたり…


「あっ、あの、茶々…様…」


「畏まらずとも良い。三成は…よくしてくれておるか?」


桃は正座しながら視線を宙にさ迷わせる。


「えーと…は、はい、とってもよく…」


――さっきキスされそうになったことをまた思い出してしまって赤くなった時――


「失礼いたしまする」


張りのある低い声が聞こえた後、正装した三成が頭を下げて中へと入って来た。


「三成、わたくしの着物を桃姫に差し上げに来ました。よければ桃姫に」


…三成はどこか冷めた瞳をしていた。
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