【完】 After Love~恋のおとしまえ~


サトシと付き合いはじめてから、私は料理教室に通いはじめた。

料理はあまり好きではない私だったのだけれど、サトシのために料理上手になりたいと思ったからだ。

私はサトシと付き合う前にもいくつかの恋をしてきたけれど、振り返れば、そのどれもが自分本位の恋だったような気がする。

相手のために努力したいと思う恋は、私にとって初めてのことだった。


そんなある日のこと。

サトシと私は、ある水族館に行く予定を立てていた。

初めての遠出だ。

その水族館に行く途中でピクニックもしよう、とサトシが提案してきた。

ピクニックといえば、お弁当。

習得した料理をアピールするチャンスとばかりに、張り切ってお弁当を作ることにした。

「ねぇ、サトシ。おむすびの具は何が好き?」

「俺、おむすびじゃなくてカツサンドがいい」

えっ、カツサンド?

予想外の返答にとまどったものの、リクエストには答えたい。

当日、カツはもちろんパンも自分で作り、私は完全手作りのカツサンドを作ったのだった。
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