今夜、俺のトナリで眠りなよ
 一樹君が帰ってきたのは、午後9時過ぎだった。

 玄関が開く音がすると、私は慌てて居間を飛び出した。

「一樹君っ」

 私の慌てぶりに、一樹君が苦笑して肩を持ち上げた。

「桜子さん、慌て過ぎだから」

「だって……気になって」

「はい、これ」

 一樹君が、一通の封筒を私に渡してくれる。

 私はそれを受け取ると、中身を見た。

 優樹さんの名前が書きこまれている離婚届があった。

「ちょ…どうして」

「兄貴が書いてくれた」

「だって離婚しないって言ったのに」

「まあ……、気が向いたんじゃん」

 気が向いたから?

< 125 / 135 >

この作品をシェア

pagetop