仇恋アベンジャー
とある冬の朝。
「ん……マスター……」
「ん?」
「離れないで……」
私はそう言って恵一に抱きついた。
「はは、お前、俺のことそんなに好きなの?」
冬の朝は辛い。
「マスターが出ると、寒いんですよ」
寝惚けたままそう答えたが、恵一は笑って私から離れていった。
私は心地よい温もりを取り戻すべく、彼の掛け布団を体に巻き付ける。
「俺はカイロか」
「そうですよ」
恵一は笑って暖房のスイッチを入れ、再びベッドに戻ってきた。
冷たい空気が流れ込んでくる。
「ひゃっ、マスター」
「ん?」
「寒いから戻ってこないでください」
「どっちがいいんだよ」
一度寝床を離れた恵一は、体温を外気に奪われて冷たくなってしまっていた。
これではカイロにもならない。