トツキトオカ
次々に妊娠・出産していく友人たちやマタニティ関連の雑談やグッズに煽られるように、私はまんまと子供が欲しくなってしまったのだ。

一度そう思うと何が何でも貫き通すのが私の信条なのだが、こればかりは確実に夫の同意と協力が必要になる。

私はできる限りさりげなく自然に切り出した。

「ねえねえ、私たちの赤ちゃんはいつぐらいにしようかね?」

「・・・・」

勘のいい夫は私の意図をすぐに察し、勝ち誇ったように言い放った。

ほれ見たことか、言わんこっちゃない。

私もそう思った。

本当に夫は私という人間をよくわかっているなぁと感心してしまう。

単に私がわかりやすい性格なだけなのかもしれないが。

とにかく私は一度そうしたいと思ったことは何が何でもやりたくなってしまう根っからのわがまま気質なのだ。

悪い意味で貪欲だと、自分でもよく呆れる。

私はまず夫の説得に取り掛かった。

説得と言っても、一度は自分が我慢すると言ってしまった子作りである。

今更単純に子供欲しいと訴えても却下されるのは目に見えている。

私は無い知恵を絞り出し、夫に「妊娠の難しさ」を訴えることにした。

子供ってなかなか出来ないらしいよ、子作り開始しても半年から1年は出来ないんだって。

だったら今から始めてちょうど良いかもしれないよ。

夫の反応は「ふうん」とイマイチ。

だけど私はめげずに訴え続けた。

夫がこの私の「言い訳」に納得したのか、いつもの私のわがままに折れたのかは定かではないが、私は何とか、半ば強引ではあるが「解禁」へと漕ぎ着けることができた。

してやったりである。

何だかんだで、夫は私に甘いのだ。

決してのろけている訳ではない。

こんなわがまま三昧でお子ちゃまな私によく何年も付き合ってくれていると本当に感心しているのだ。

愛想着かされて捨てられたら困るのだが、私のわがままはなかなか直りそうもない。

< 2 / 51 >

この作品をシェア

pagetop