琥珀色の誘惑 ―日本編―
二〇××年四月十一日、月瀬舞(つきせまい)はこの日、めでたく二十歳の誕生日を迎えた。


「おめでとう、舞!」


舞の親友、桃子が口火を切った。

すると他の皆も「誕生日おめでとう!」「ハッピーバースデー舞ちゃん」テーブルのあちこちから声が上がる。


「ありがとう」


舞はにわかに注目を浴び、猫背気味の身体をさらに縮めながら頭を下げ、お礼を言う。


身長一七五センチ、体重は――。

小学校の入学式で一三〇センチもあった舞は、聖麗(せいれい)女学院幼稚舎から高等科まで、学年で一番背が高かった。

女子校ということもあり、発表会や文化祭で劇をやる時は、必ず男役……王子様に選ばれたのである。

その度に、可愛らしいドレスを着る小柄なクラスメートが羨ましくて仕方なかった。

そんな時、舞の母は決まって言うのだ


『大丈夫よ。舞ちゃんにもちゃーんと王子様がいるんだから!』


確かに一生ひとりぼっちだとは思っていない。

いつか恋愛して結婚だってしたいと思う。


でも王子様はどうだろう?


結婚式でもサイズの合うタキシードはあっても、ウェディングドレスなんてない気がする。

それを考えるとため息のこぼれる舞であった。


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