琥珀色の誘惑 ―日本編―
舞は“他国の王子様”の身を案じたつもりだったが、ミシュアル王子は“将来の夫”を気遣ったと思ったようだ。


誤解は早めに解くべきだろうか?
だが、珍しく口元に笑みを浮かべハンドルを握る王子の横顔を見ていると、まあいいか、という気になってくる。

それに、シートベルトをはめてくれた時に間近で見た琥珀色の瞳。
透き通るような金色だった。
まるで宝石のようで、あれが本当に天然で、眼球の用途を果たしているのかと思うと不思議でならない。

見るつもりはないのに、舞の視線はついついミシュアル王子に向いてしまう。


すると、先ほどまでご機嫌だった王子が急に怒ったような声で舞に言った。


「どうして君は、そんな危険を犯そうとするのだ!」

「は? 危険って」

「男にそんな視線を向けるのは、手馴れた娼婦か無垢な娘のどちらかだ。……君が後者であることを願っているが」


さすがに黙っていられず舞は抗議の声を上げた。


「わたしはただ、あなたの瞳の色が珍しいから。……だから見てただけです!」

「言い訳はいい。妻に求められることは不快ではない。積極的な女は私の好みだ。だが、今は困ると言っている」


ミシュアル王子は舞の言葉を『言い訳』と決め付け完全無視である。


「違いますってば! わたしは本当に」


その瞬間、車はキッと停まった。


「舞、私はうるさい女の口を塞ぐ手段は一つしか知らない」
 
 
そう言うとミシュアル王子は自らのシートベルトを外し、レイバンを取った。 


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