主婦だって恋をする

彼女はすぐに目をそらし、男と一緒に俺の目が届かない売場に消えた。


あの男って……きっと旦那、だよな?

……どんな奴か見たい。


俺は好奇心から二人の側まで行き、棚の陰から彼らを観察した。



「冷たい湿布の方が効くって」


「私は温かい方が好きだけどな……」



どうやら湿布選びに迷っているらしい。

そりゃ好みじゃなくて痛みの種類で選ぶもんなんだけど……


心の中で突っ込みながら、俺より少し背の高い旦那の顔を確認する。



……いわゆる、“優しそう”な顔。

特別良くも悪くもなく、笑うと目がなくなる。


成美さん、ああいうのが好みなのか……


自分とは全くタイプの違う彼を見て、俺は少しだけ不機嫌になる。


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