ひとまわり、それ以上の恋
 まあ落ち着けよ、と沢木さんが両手をあげて降参した。

「いやいや寧ろ、俺が一番安全じゃないか。ね、円香ちゃん」

 沢木さんの極上の笑みはやっぱり危ういフェロモンたっぷりで、ウンとは頷けない。

「まだ、よく知らないので……分からないですけど」

「そう。だからこれから仲を深めるんだよ。じゃあな」

 沢木さんも沢木さんだ。わざと兄を怒らせるようなこと吹っかけたりして。

 度々家族でご飯のときに犬猿の仲って言ってた噂の同僚って、沢木さんのことだったりして。営業のエースで気に入らないとか言ってたし。なんかそんな気がしてきた。 

 バーの中には個室があって、大人数入れるパーティ用のスペースに案内された。

「カウンター占領してるヤツがいるからさ、円香ちゃんにカクテルもってきてあげるよ。お任せでいい?」

「あ、ありがとうございます」

 本来なら私が動かなくちゃいけないところだ。うっかり、気が利かない。せめて……と皆におしぼりを順番に配っていく。

 皆が集まってから乾杯をして、それぞれ自己紹介した。それぞれ別々の部署だけど、こうしてみると研修のときに見た顔がたくさんあった。



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