愛は満ちる月のように
すると彼女の後ろから、


「一条なら構わないさ。ランチメニューじゃなくてもいいんだろう?」


そんなふうに言いながら、厨房から那智が姿を見せた。


悠よりひと回り小柄で、すっきりした一重の目元が印象的な男だ。地元タウン誌で特集を組まれるほどの人気シェフだが、女性関係で浮いた噂は聞かない。


「ああ、食えるならなんでも構わない。ふたり分頼むよ」

「これはまた……。一条が女連れとは珍しいな」

「ナイスフォローだな。おかげで株も上がるよ」


悠は笑って答えた。


「妹なんてオチはなしで頼むぞ」

「当たり前だ。――妻の美月だよ」


顔見知りの従業員が一斉に振り向き、「本当に結婚してたんだ!」と言われる悠だった。


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