愛は満ちる月のように
悠の言ったように、美月が独身に戻り子供を産めば、今度はその子供の命を盾に結婚を強要されるだろうか? 

有形の遺産は可能な限り譲渡や寄付しても、美月の存在そのものに価値がある、と言われたら……。


(ひょっとして、子供にまで辛い思いをさせることになるの?)
 

前向きになろうとするたび、絶望的な思いが美月を襲う。
 

次の瞬間、室内に電話の音が鳴り響いた。

ハッとして固定電話を凝視する。外線は繋がれないはずだ。おそらくはフロント係だろう。伝え忘れたことがあるのか、あるいは、フロントに悠が尋ねて来た可能性も考えられる。


美月は携帯をバッグに戻し、固定電話の受話器を手に取り……。


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