マスカケ線に願いを
「ユズって、不思議ですね」
「ん?」
私はどこかへ飛んでいっていた意識をユズに戻した。
「凄い存在感があるのに、きらきら輝いてるのに、ぜんぜんそれを感じさせない」
「なんだそれ」
ユズがうどんを食べながら笑う。
「たまに、無性に人が恋しくなるんです」
「うん?」
「人が恋しいわりに、独りになりたい。だけど、本当に一人でいると、凄く寂しくなる」
ユズが、私の告白に耳を傾けた。
「さっきも、行きたくもなかった合コンに無理やり参加させられて、ずんと落ち込んだもので……」
「意外に寂しがり屋さんなんだな、杏奈は」
ユズが笑った。そして、真顔になった。
「一人になりたいときは、一人にならないほうが良い」
「え?」
「一人でいると、余計なことを考えてどんどん落ち込むぞ」
私は驚いてユズを見た。
そう、私が感じていたのはまさにそんな感覚。
「でも……こんな遅くまで、迷惑ですよね」
時計の針は一時を指そうとしていた。
ユズは穏やかな笑顔で首を横に振った。
「泊まっていけば良い」
私はきょとんとユズを見て、違うとはわかっていながらも訊いていた。
「……それは夜のお誘いですか?」
「馬鹿」
笑うユズに、私も笑った。