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「……じ、ん……っ」

 会いたい。
 会いたい。
 会えない。
 会いたくない。
 もう、疲れた。
 もう、傷ついてばかりは……疲れた。

 私の全部の想いを綴ったら、手紙は長くなってしまった。
 だけど、これでいい。
 もう会えなくなる人に、さよならを言えるんだから私は幸せだ。


「ひゅか」
「あっ、みあ」

 待ち合わせの場所で、私達はまた顔を合わせた。

「卒業だね」
「うん」

 思い返せば、ずいぶんと濃い時間を過ごした。
 一人の男のことだけを、私は想っていたんだな。

「……みあ、大丈夫?」

 心配するひゅかに、私は微笑んで見せた。

「ひゅか、今までありがとう。私、ひゅかがいたから決断できたんだと思う」
「みあ……」

 私はぎゅっとひゅかを抱きしめて、

「本当は、凄く会いたいし、まだ大好き。だけど、このまんまじゃ私、陣を忘れられなくなっちゃう」

 ひゅかは、何も言わずに私を抱き返してくれた。

「せっかくなら、もっと良い恋愛がしたかったな……」

 恋心が、報われるような恋がしたかった。
 私は、誰かに愛されたかった。

「大丈夫、みあ。みあに良い人が現れないわけないよ」
「うん」

 涙をこらえて、私はひゅかに笑いかける。
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