ヴァムピーラ
「カノン?」
「貴方は、本当に人間?」
リキはそんな私の質問を鼻で笑って、
「なんだそれ?人間じゃなかったらなんだ?」
「だって、私、人間を撮りたいって思ったことないんだもん」
「ん?」
「私、貴方を撮りたいって思った、今」
私の言葉に、リキはにやりと笑って、私の耳元で、
「今夜一緒に寝てくれたら撮らせてあげてもいい」
「なっ・・・」
ぱしんっ
「ってぇ」
「最低!」
真っ赤になった私は、リキの手からウィッグを奪い取ると立ち上がった。
「お前な、ひっぱたくことないだろ!」
「ほんっとうに、最低!」
歩きながら髪の毛をまとめて、ウィッグをつける私はまだ知らなかった。
これから私が辿ることになる道も。
私が興味を持ったこの人の正体も。
自分自身の出生の秘密も。
このときの私は、まだ知らないでいられた。