気ままに生きる
 そのギターを手に入れられたのは新しい親父のおかげ。

 お袋はずっと水商売だったからバーとかでも働いていたんだけど、そこで知り合った歯医者さんと引き合わされたんだ。

 「一緒になるけどどう?」みたいな感じで。そしたらギターを買ってもらったんだ。

 「いいんじゃないのお袋がそれでしあわせになれるんだったら」くらいであんまり深く考えなかったんだけど、結局その人が俺を高校へ入れてくれたりしたんだ。だからその人に会ってなかったら今と人生変わっていたかもね。

 小学生の頃から親の職業はなんですかってのに書くのがすごく嫌で、なんて書けばいいのか迷っていたら「自由業って書けばいい」って言われてそうしてたんだけど、これからは違うんだなって。

 でも高校になって実は結婚してなかったんだってわかった。お袋は2号さんだったんだよ。本当は六角橋のあたりで歯医者をやっている人で田中さんって言うんだけど実はちゃんと女房子どもがいたんだ。

 最初はそういうの知らないから、へぇ、なんて言って「お父さんは歯医者です!」なんて書けるから結構かっこいいなあなんて思ったんだけど、そんなたいしたことなかったよね。

 俺のことおぼっちゃまって思っていた人も多かったけれども、それは高校に入ってからだね。そういうふうに一緒に住むようになったのは高校2年くらいからかな。でもまあほとんど一緒に住んでいなかったけどね。
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