やっぱり、好きだ。



 

 翌日、森田と英語の授業を受けるべく講義室に入ると、サヤ子が後ろの方の端っこに1人で座っていた。

  「あ、サヤちゃんだ」

 早速サヤ子を発見した森田が、サヤ子の方に駆け寄る。

 森田を追って俺もサヤ子の席の近くに行こうとした時

 「あーあ、ストーカーちゃんがイイ席取っちゃってるわ。しゃーないべ、ストーキングとかされたくないし、向こうの席行くか」

 と、たいしてイケてない男女が、サヤ子に聞こえる様に話し出した。

 サヤ子は何度こんな言葉を、どれだけの人数に言われたのだろう。

 傷つく言葉はしっかりサヤ子の耳に入り、サヤ子は肩をピクっと震わせると、涙を溜めた瞳を閉じ深呼吸した。

 そして『トンッ』と机で教科書を揃えると、それを持ち上げ一番前の真ん中の誰もが避ける席へ移動した。

 サヤ子は決して不真面目ではない。 どちらかというと真面目寄り。でも、そこまで張り切って授業を受けたがるガリ勉タイプではない。

 勿論俺もそーゆータイプではない。 でも、自分への戒めとサヤ子への懺悔を込めて、俺も敢えて一番前の席に行こうとすると、そんな俺を追い抜いて森田がサヤ子の隣に座った。

 「サヤちゃん、まだ後ろの方席の空いてるよ??」

 『あっち行こうよ』と真ん中より後方の席を指さしてはサヤ子の腕を掴み、引っ張り立たせようとする森田。 

 「・・・コンタクト、落としちゃって・・・後だとちょっと・・・」

 サヤ子が咄嗟に嘘を吐いた。サヤ子の目は両目1.0だ。

 「・・・ふーん?? 今日は俺も1番前で授業受けてみようかな。何気に1番前って座った事ないし」

 サヤ子の嘘に気付いているのか否かは分からないが、どうしてもサヤ子の隣に座りたい森田は、困惑するサヤ子に笑顔を向けると、後ろの席への移動を取りやめた。

 「後ろ、行った方がいいよ。1番前だとよく教授に指されるか・・・『うわー。今度のターゲットは森田くんなんだ。どんだけイケメン好きなんだよ』

 サヤ子の言葉を遮って、後ろの方から心ない言葉が飛んできた。
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