悪魔のようなアナタ【完】



隣家には今、別の家族が住んでいる。

初老の夫婦で近所仲も悪くないが、彼がいたことを思い出すと時折寂しい気持ちになる。


「晃くん、今どうしてるのかな……」


灯里は小さな声で呟き、部屋のカーテンを閉めた。

脳裏に残る彼の面影は10年間変わっていない。

自分が25歳になったということは彼はもう32歳になっているはずだ。

32歳ならひょっとしたら結婚しているかもしれない。

灯里はふぅと息をついた。


灯里もそろそろそういうことを考えなければならない年齢ではある。

が、相手がいなければどうにもならない。


――――今年で彼氏いない歴25年。

このまま記録更新を続けるのはさすがにちょっとまずいと自分でも思う。


「でもなぁ……」


毎日会社と家との往復のみだとほとんど出会いがない。

大学も女子大だったためそういった繋がりもなく……。

会社には同年代の男性はいるが、だいたいが彼女持ちもしくは既婚だ。


ただ一人を除いて。


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