社長と秘密の生活


「要……おはよ?」

「……おはよぅ」


杏花は優しい声で朝の挨拶をする。


「朝食出来てるからね?」


杏花は俺の顔を覗き込んで、可愛い顔で微笑みかける。

……………そうなんだ!!

杏花は俺のために家政婦に任せるのではなく、

『自分で作る』と聞かなくて。

毎朝早くに起きて準備する。

俺としても杏花の手作りの方が嬉しいし、

それに、杏花の料理の腕はハンパじゃない。

ホテルのシェフと仲が良かったらしく、色々教わったらしい。

それと……父親に。


テーブルの上にはサラダを始め、スープや和え物など

色鮮やかな料理が並んでいる。

元々、朝食をほとんど取らない俺に合わせて

食べやすい料理を用意してくれている。


1人で住んでた時は、一条の本宅から家政婦の村岡が毎日来ていた。

初めの頃は杏花も黙って食べていたが、

『妻が作るべきよね?』と……。

いつの間にか毎日、杏花が作るようになっていた。


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