愛を教えて ―背徳の秘書―
その後、ふたりは一緒にシャワーを浴びた。人心地つくと、ベッドの上で他愛ない話をしながら戯れる。
そんな中、冗談めかして宗が差し出した合鍵を、雪音は恐る恐る受け取つつ……。
「これって、何個目?」
「人聞きの悪いことを言うなよ」
「だって、何曜日の何時ごろなら“ダブルブッキング”にならないのか聞いておかないと」
「だから君専用だって」
「ふーん。ま、気が向いたら来てあげるわ」
そう言ったときの、雪音の顔はまんざらでもなかった。
――宗はシャワーのコックを捻る。
湯は止まり、ポタポタと水滴がタイルに落ちた。
予想どおり、雪音は休みのたびに宗のマンションを訪れるようになった。宗も、なるべく休日を重ねるようにして、雪音とのデートを楽しんでいる。
最初は不安だった。自分で引いたラインの内側にひとりの女性を入れることは、彼にとって危険な賭けである。
しかし、些細なことで一喜一憂する社長夫妻を目の当たりにし……。愛とか恋とか家庭とか――それまで、面倒だ、と人生から省略した物を、彼は欲しくなった。
香織が『結婚する気なんでしょう?』と言ったのは、ある意味正解である。彼は雪音との結婚を真剣に考え始めていた。
だがそのためには、一日も早く身辺をキレイに整理しなければならない。
宗はもう一度深くため息をつき、バスルームを後にしたのだった。
そんな中、冗談めかして宗が差し出した合鍵を、雪音は恐る恐る受け取つつ……。
「これって、何個目?」
「人聞きの悪いことを言うなよ」
「だって、何曜日の何時ごろなら“ダブルブッキング”にならないのか聞いておかないと」
「だから君専用だって」
「ふーん。ま、気が向いたら来てあげるわ」
そう言ったときの、雪音の顔はまんざらでもなかった。
――宗はシャワーのコックを捻る。
湯は止まり、ポタポタと水滴がタイルに落ちた。
予想どおり、雪音は休みのたびに宗のマンションを訪れるようになった。宗も、なるべく休日を重ねるようにして、雪音とのデートを楽しんでいる。
最初は不安だった。自分で引いたラインの内側にひとりの女性を入れることは、彼にとって危険な賭けである。
しかし、些細なことで一喜一憂する社長夫妻を目の当たりにし……。愛とか恋とか家庭とか――それまで、面倒だ、と人生から省略した物を、彼は欲しくなった。
香織が『結婚する気なんでしょう?』と言ったのは、ある意味正解である。彼は雪音との結婚を真剣に考え始めていた。
だがそのためには、一日も早く身辺をキレイに整理しなければならない。
宗はもう一度深くため息をつき、バスルームを後にしたのだった。