愛を教えて ―背徳の秘書―
初めは、嘘ばっかり、と思った。

どうせ、逆玉を狙っているのだろう、と。

でも、雪音と関係してすぐ、静香に縁談が持ち上がり、それはあっという間に決まった。

四月の初め、静香は造船会社の御曹子に嫁ぎ……。宗と静香の関係は、本当にセックスだけだったと知った。



だが、雪音は遊びで深い関係になるのは嫌だ。

一度寝てから、宗は会う度に雪音を求めるようになった。断らなきゃ、と思いながら、ついつい気づいたら言いなりに寝てしまう。

宗が雪音のことをどう思っているのか……はっきりさせようと思った矢先、雪音の前にひとりの女が現れた。

ちょうど宗と車でデートしている最中のこと。雪音が助手席に乗り込もうとしたとき、いきなり、『泥棒猫!』と言われ、振り向いたところを女に叩かれた。

そのとき、宗が口先だけの男であったことを知る。


つくづく男を見る目がない。

雪音が覚悟を決めて自分から離れようとしたとき、宗は追いかけてきたのだ。


――これまでのことは全部遊びなんだ。付き合いのあった女とは綺麗に別れる。時間が欲しい。雪音は特別だから。


『本気で愛してるんだ』


その言葉にほだされ……雪音はまた、悪い男に捉まってしまう。


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