教組の花嫁
 
 小豆色の着物に黄色の帯が、百合葉の美しさをいっそう引き立てている。

 (若い頃は、さぞ美しかっただろう)

 49歳の百合葉は、今も美しかった。


 「小波さんに言っておきたい事があるのだけど」
 「何でしょうか?」


 小波が百合葉に答えた。



 「教祖様の跡継ぎを産む訳だから、あなたには守ってもらいたい事が色々あるの」


 百合葉が厳しい顔付きで。


 「はい」


 「まずは、当然だけど教祖様以外の人との恋愛は厳禁。教祖様以外の男性にも、出来る限り近付かない事」

 「あっ、はい」


 小波はどぎまぎしながら承諾した。


 「それから、外出は私の許可を取ってね」



 「まるで、大奥ですね」
 「そう、大奥に入ると、思ってもらえばいいわね」


 お局のような顔をして、百合葉が呟いた。





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