銀棺の一角獣
 アルウィナは肩にかけられたマントをかき合わせた。


「わたし、怖いの……わかるでしょう?」


 ディレイニー王国は強大だ。
 今まで国交がほとんどなかったから、どんな相手が待ちかまえているのかわからない。

 アルティナにとっては、父と兄の敵でもあり――顔を合わせなければならないと思うと、胸が締め付けられるような気がする。


「……わかります」

「そんなところに連れて行くわけにはいかないもの。あちらに着いたら、ディレイニー人の侍女がつくでしょう。道中の不便は我慢するわ」


 道中ずっと喪服で過ごすつもりだから――よけいな装飾のない服は、自分一人でも着ることができる。

 簡単な形にではあるけれど、自分で髪を結うことも覚えたから何とかなるはずだ。
 そう言うと、ルドヴィクのまとう雰囲気がよりいっそう穏やかなものへと変化した。

「でも、怖いと思ってしまうの」

「――お守りします。」


 ためらいがちに、ルドヴィクの両手がアルウィナの背中に回される。
 二人とも、それ以上近づいてはいけないことはよくわかっていた。
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