週末の薬指
違う。私は本来弱いのかも。

悠介に振られた時も心が壊れて入院してしまった。

あの時は、悠介に振られたそのことよりも、私生児だという、自分では変える事のできない運命を嘆いて壊れてしまったんだ。

この世に生まれてきたことへの問いかけが、いつも自分の中にあって、その答えを出せないままに時間という薬が見せかけの治癒を促したんだ。

でも、今はそんな自分の運命や生まれてきたことへの理由なんてどうでもいい。

夏弥が側にいればそれでいい。

私が生まれてきたのは、夏弥の側にいる為だと、そう結論を出してもいい。

だから、それが叶わないかもしれないと感じて、そんな不安に襲われて、私は確実に弱くなる。

「夏弥、ずっと一緒にいてね……」

思わずそう呟いて、夏弥の首に抱きついてぎゅっと力を込めた。

こうして今、夏弥は無理をしてでもここにいてくれる、その幸せに浸りながらも、それでも不安は拭えない。
どんなに大切にされても、愛されても、この先ずっと抱えていく不安が見え隠れ
する。

私が夏弥を愛する限り、逃げられない感情に振り回されるのも、幸せの形なのかな……。

一人落ち込みながら、あらゆる感情に折り合いをつけながらも、それでも気になっている事がある。

それは、蓮さんが私に懇願していた事。

『夏弥を悲しませないでくれ』と、言っていたあの表情。
心底夏弥を心配していた、親友ならではの切ない表情が忘れられない。

「夏弥には、傷ついた過去が、あるの?」

夏弥の首筋に、小さく呟くと、一瞬びくっとした夏弥の体を感じた。

そして、夏弥は何も言わないまま、私を力いっぱい抱きしめた。
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