夢の外へ
声の主の方に視線を向けた私は驚いた。

わっ、イケメン!

1度もカラーリングをしたことがないようなサラサラの黒髪。

眠たそうな一重のまぶたは、私の好み。

顔立ちも俳優のようによく整っていて……ああ、なんかヤバいかも。

じっと観察するように見つめている私に、イケメンは優しく微笑んだ。

きゃーっ、笑うとかわいい!

笑うと、一重の目が細くなった。

彼は私の後ろに向かって手を伸ばしたと思ったら、
「値札ついてます」

そう言ってボレロの値札を外して、得意気な顔でそれを私に見せた。

「――あっ…」

私は恥ずかしくて、声が出てこなかった。

ウソ、でしょ…?

服の値段はちゃんと値札外したはずなのに…。

青い顔の私とは対照的に彼は涼しい顔で外した値札をスーツのポケットの中にしまった。
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